『情報コミュニケーション学』のオムニバス授業(1)

情報コミュニケーション学部には、『情報コミュニケーション学』という、学部の複数の教員がコーディネーターとして、それぞれのテーマを掲げて授業を構築する科目があります。
2019年度に始まった、私の新企画では、“多様な視点からアメリカ社会、文化について理解を深める”というテーマを掲げています。
学部の学生の関心は、メディア、音楽、スポーツ、ジェンダー、など多岐にわたります。
そこで、全14回の授業のうち、半分の7回は、私の専門のアメリカ政治から、そして、もう半分は学内外の様々な専門家をゲスト講師としてお招きして、講義をしていただく予定です。
ここでは、ゲスト講師をお招きした回について、簡単にご紹介していきたいと思います。

第1回ゲスト講師、吉見俊哉先生(東京大学大学院情報学環教授)
テーマ「トランプのアメリカに住む」2019年5月8日

吉見先生は、ご著書『トランプのアメリカに住む』(岩波新書、2018年)をベースに、ハーバード大学で1年間教えてこられた体験を織り交ぜながら、先生が観察された「アメリカの現在」についてお話されました。

同書は、「全体としてアメリカで起きていること、アメリカ社会をどういう風に考えたらいいか」を問う本です。
最初に、吉見先生は、学生に、「トランプのアメリカ」のイメージについて一言ずつマイクを回して発言させていました。
まさか全員にマイクが回ってくるとは、学生は予想していなかったのではないでしょうか。(私も驚きました!)
次に、社会学者であり、メディアの研究者である先生の切り口は次の4点と説明されました。
1. ポスト真実
2. 労働者階級文化
3. 性と暴力
4. 人種とナショナリズム

そして、先生は歴史の軸を入れてアメリカとは何か、と考えていかなければならない、と述べられ、建国期のアメリカから、南北戦争を経て、レーガノミクス以後のアメリカへ、と全体のフレームワークの中で今のアメリカを見ていく必要性を指摘されました。

いずれも興味深いお話でしたが、その中から3点を整理してみると・・・
1. 先生が東京大学とハーバード大学で教えられたご経験から、日本の大学の学生の履修科目が多すぎてかえって、勉強する時間がないというお話。ハーバード大学では履修科目数が少ない分、1科目当たりの勉強量が多くなり、同じ科目で週に2,3回、先生やTAと会うことになるそうです。
2. 労働者階級文化の行方、に関連して、書籍や資料を郵便でアメリカに送ったところ、「破損はあっても何とか届いたのは6箱中2箱だけだった」という話。この体験談は、学生にかなり衝撃を与えたようでした。ご苦労されたエピソードから、アメリカの公共システムの疲弊や公共インフラの破壊についてご説明されました。
3. インターネットのアルゴリズムによる分断の自動化について。今の世界はフィルターバブルになっていて、情報にアクセスするほど自分の世界が狭まっていく、というご指摘。また、分断をあおるポピュリズム・トランプの“嘘八百主義”という視点に対して、学生からは「ありふれた嘘の中から信じたいものだけを信じる社会になり、社会が混乱しているのではないか」という感想もありました。

実体験を織り交ぜながら、歴史にも触れて多角的にお話しされた吉見先生の講義から、アメリカ社会の分裂が止まらない、今アメリカは混乱の中にある、という状況が生々しく学生に伝わったように思います。吉見先生、お忙しい中、お越しいただきありがとうございました。

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